泣いた赤鬼
山の中に1人の赤鬼が住んでいました
赤鬼は人間たちとも仲良くしたいと考えて
自分の家の前に立て札を立てました
「心のやさしい鬼の家です。どなたでもおいでください。
おいしいお菓子がございます。お茶も沸かしてございます。」
けれども人間は疑って誰一人遊びにきませんでした
赤鬼は悲しみ、信用してもらえないことをくやしがり
しまいには腹を立てて、立て札を引き抜いてしまいました
そこへ友達の青鬼が訪ねて来ました
青鬼は訳を聞いて、赤鬼のために次のようなことを考えてやりました
青鬼が人間の村へ出かけて大暴れをする
そこへ赤鬼が出てきて青鬼をこらしめる
そうすれば人間たちにも赤鬼がやさしい鬼だということがわかるだろう
と言うのでした
しかしそれでは青鬼にすまないとしぶる赤鬼を
青鬼は無理やり引っ張って村へ出かけて行きました
計画は成功して村の人たちは安心し
赤鬼のところへ遊びにくるようになりました
毎日、毎日、村から山へ
三人、五人と連れ立って出かけて来ました
こうして赤鬼には人間の友達ができました
赤鬼はとても喜びました
しかし、日がたつにつれて気になることがありました
それはあの日から訪ねて来なくなった青鬼のことでした
ある日、赤鬼は青鬼の家を訪ねてみました
青鬼の家は戸が固くしまっていました
ふと気がつくと戸のわきには貼り紙がしてありました
そしてそれに何か字が書かれていました
「赤鬼くん、人間たちと仲良くして楽しく暮らしてください
もしボクがこのまま君と付き合っていると
君も悪い鬼だと思われるかもしれません
それでボクは旅に出るけれどもいつまでも君を忘れません
さようなら、体を大事にしてください。どこまでも君の友達、青鬼。」
赤鬼はだまってそれを読みました
二度も三度も読みました
戸に手をかけて
顔を押し付け
しくしくと
なみだを流して泣きました
節分のその日
ボクも赤鬼とおなじ様にお客さんを待ちました
「おいしいお菓子がございます。お茶も沸かしてございます」
なんてつぶやきながら
幸いなことに
沢山とはいかないけれど
ポツリポツリとお客さんが来てくれるので
どうにか赤鬼にならずにすみました
開店前にそんな本を読んだものだから1日中
赤鬼の気持ちと青鬼の気持ちばかり考えて
今年は遠慮がちに少しだけ
「友達は大事にしないとね」ってそう思って
鬼が痛がらないくらいに少しだけ力を抜いて
いろいろおもいやりながら、そうやって豆蒔きをしました
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